近年、厳かな神社挙式や料亭・旅館での披露宴など、伝統的な和婚(和装の結婚式)が改めて注目を集めています。洋装のウエディングとはひと味違う日本独特の格式や、静謐で上品な雰囲気は、ゲストにとっても印象深いものになるでしょう。
しかし、いざ和婚に招待されると、「靴はどこで脱げばいい?」「座敷に上がるときの正しいマナーは?」と、普段の生活とは異なる作法に戸惑う方も多いはず。特に床の間や畳がある会場では、一歩間違えると失礼にあたる可能性も否定できません。
そこで本記事では、和婚にまつわるマナーのなかから「靴の脱ぎ方」と「座敷での振る舞い」に焦点を当ててご紹介します。日本の伝統文化を守るためにも、ゲストとしての立ち居振る舞いをしっかり身につけ、思い出に残る素敵な和婚をサポートしてみませんか?
和婚は神社挙式や料亭での披露宴など、和装をメインとした結婚式を指すことが多いです。白無垢や色打掛、紋付袴など、日本独自の衣装が醸し出す厳かな空気感は、洋装の挙式とはまったく異なる雰囲気を生み出します。
・神社挙式
神前で執り行われる挙式は、新郎新婦が三献の儀(さんこんのぎ)を行い、玉串奉奠(たまぐしほうてん)や誓詞奏上(せいしそうじょう)など伝統的な儀式を通して神に愛を誓います。ゲストとして立ち会う場合、神職や巫女が進行する姿を見るだけでも厳粛な気持ちになるはずです。
・料亭・旅館での披露宴
和婚の披露宴は、お座敷や畳の広間で行われることも珍しくありません。質の高い日本料理が振る舞われることが多く、ゲストは「日本の美」を味覚や視覚で存分に楽しむことができます。
このように和婚には、日本古来の文化や風習を体感できるという大きな魅力があります。しかし、その一方でゲスト側も和式ならではのマナーを心得ておかないと、思わぬところで恥をかいてしまう可能性があるのです。
和婚では、神社や料亭などで靴を脱ぐシーンに遭遇することがよくあります。靴を脱ぐタイミングや揃え方ひとつで、周囲からの印象が大きく変わることも。ここでは、基本的なマナーを押さえておきましょう。
・靴を脱ぐ場所を見極める
神社の拝殿や料亭の座敷など、土足厳禁の場所では手前に下足箱や式場スタッフが案内するスペースが設けられていることが多いです。迷ったらスタッフに「靴はここで脱ぐのでよろしいですか?」と一声かけると、スムーズに対応できます。
・踵(かかと)をそろえて置く
靴を脱いだら、脱ぎっぱなしにしてそのまま上がるのではなく、踵をそろえてきちんと並べます。靴のつま先を入口側に向けるのが基本で、後から来る人やスタッフが取り違えないように配慮しましょう。
・履物を脱ぐ際の姿勢
靴やサンダルなどを脱ぐ際は、あまり腰を曲げすぎず、上半身の姿勢をやや保ったまま座るようにすると上品な印象に。和装の女性は、裾が乱れないよう注意を払いながら、静かに脱ぎ履きするのがポイントです。
和婚の披露宴や二次会は、畳の座敷で行われることも多くあります。慣れない人にとっては「どう座ればいいの?」「足を崩してもいいの?」など、戸惑うことが少なくありません。失礼にならない程度にリラックスするためにも、以下のマナーを覚えておきましょう。
・正座が基本
和の空間では、最初は正座で座るのが基本です。新郎新婦や主賓の挨拶が始まる前など、公の場面では正座をキープし、周囲に敬意を表す姿勢を示します。ただし、長時間の正座は足がしびれてしまうので、適宜足を崩しても構いません。
・足を崩すタイミング
足を崩す場合は、目上の方や周囲の様子を見ながら、タイミングを慎重に計りましょう。主賓のスピーチ中や新郎新婦が挨拶しているときなど、式が厳かに進行している場合は正座を崩さないほうが無難。落ち着いたタイミングで、両膝をそろえた横座り(女性なら「お姉さん座り」)をすると上品に見えます。
・立ち上がるときの動作
座敷から立ち上がるときは、周囲のテーブルや畳をバタバタと踏み鳴らさないよう、静かに。髪型や着崩れにも注意しつつ、ふわりと立つイメージを持つと、上品な振る舞いを保てるでしょう。着物を着ている場合は、裾を軽く抑えながらスッと立ち上がるのがコツです。
和婚では、ゲストが着る服にも和のテイストを取り入れたり、上品さを際立たせるのが魅力です。逆に、洋装で出席する場合も、和婚の場にふさわしい装いであるかをチェックしておきましょう。
・洋装ならシックかつ華やかに
黒やネイビーのワンピースは無難ですが、あまりにも地味すぎると、お祝いの席にはそぐわないことも。アクセサリーやバッグなどの小物で、華やかさをプラスして“ご祝儀感”を演出しましょう。露出が多すぎるドレスは和の場に合わないことが多いので要注意です。
・和装で行くならTPOに合わせる
ゲストとして和装を選ぶ場合、あまり格の高い留袖や訪問着である必要はありません。ただ、あくまで「結婚式」というフォーマルな場なので、小紋や軽めの付下げであっても、落ち着きのある柄や配色を選ぶとよいでしょう。コーディネート次第で華やかさを演出しながらも、主役を引き立てることを忘れずに。
・座敷での動きやすさも考慮
座敷で長時間過ごす場合は、あまり締め付けがきついドレスや、ヒールが高すぎる靴は疲れの原因に。会場までの移動ではヒールを履き、室内では素足やスリッパに履き替えることも想定して、靴やストッキングのチョイスを進めるとスマートです。
基本的な靴の脱ぎ方や座敷での振る舞いを押さえたら、より好印象を与えるための細やかな気配りも意識してみましょう。
・荷物の置き方を工夫する
座敷では椅子がない分、バッグなどの荷物をどこに置くか迷うかもしれません。畳に直接置くのではなく、荷物置き場や荷物籠が用意されている場合は、そこを利用しましょう。もし籠がないときは邪魔にならない壁際やテーブル下に、小さくまとめて置くのがベターです。
・飲み物や料理のいただき方
日本料理は盛り付けや器が美しく、取り分けも独特のルールがあります。和婚で振る舞われる会席料理は、一品一品をゆっくり楽しみつつ、器の美しさや季節の演出を味わいましょう。大きな音を立てて食べる、箸の使い方が乱暴などの行為は避けたいところです。
・他のゲストやスタッフへの配慮
和婚では新郎新婦や親族だけでなく、神職やスタッフの方々にも敬意を払いましょう。座敷で大声で笑ったり、スマートフォンを頻繁に操作したりする行為は、場の雰囲気を壊す可能性があります。必要に応じて静かに席を外し、ロビーや控え室で対応すると好印象です。
和婚は洋装の結婚式とは異なり、畳や床の間など日本独自の空間で行われるため、ゲストとしても一味違ったマナーが求められます。靴の脱ぎ方や座敷での振る舞いなど、日常生活とは異なる作法をあらかじめ押さえておけば、スムーズに対応できるだけでなく、周囲からの評価もぐっと高まるでしょう。
「正座を続けるのがつらい」「和装が初めてで不安」など、慣れない点があるかもしれませんが、事前に情報収集して対策をとれば問題なし。大切なのは、挙式を執り行う新郎新婦への祝福の気持ちと、日本文化への敬意です。
ぜひこの機会に、和婚ならではの伝統や格式を楽しみながら、ゲストとしてのマナーをしっかり守って参加してみてください。きっと、自分自身も和婚の魅力を存分に味わいながら、最高の思い出を共有できるはずです。