日本の伝統衣装といえば、まず思い浮かぶのが「着物」や「浴衣」ですが、実は一言で和装といってもさまざまな種類や格式があります。日常とはひと味違う雰囲気を楽しめる一方、正しい知識がないと着付けやコーディネートに戸惑ってしまいがち。
最近では、結婚式やパーティーなど、フォーマルな場で和装を取り入れるシーンも増えています。特に30代前後の大人世代になると、落ち着きや風格を演出したいときに「和」の要素が強い味方に。日本人らしい美しさを引き立ててくれる和装は、一度身につけるとその奥深さや魅力にハマる人が少なくありません。
本記事では、はじめて和装に挑戦する人を対象に、着物・袴・浴衣の基礎知識をわかりやすく解説します。伝統的なルールや用途、コーディネートのヒントを把握することで、より楽しく、より美しく和装を着こなせるようになるはず。まずは基礎の基礎から、一緒に学んでいきましょう。
和装の代表格といえば「着物」です。結婚式や成人式など、フォーマルな場で着用される機会が多いですが、季節ごとのイベントやパーティーシーンでも活躍してくれます。
・種類と格
着物は、大まかに「礼装用」「準礼装用」「普段着用」の3つに分けることができます。たとえば、花嫁が着る「白無垢」や「色打掛」は最高位の礼装として知られています。一方、「留袖」は既婚女性の正礼装、「訪問着」は華やかな準礼装、といったように、柄の入り方や生地によって格式が変わるのです。
・素材と季節感
着物には、絹や麻、綿といった素材が使われ、季節によって適切な生地が変わります。たとえば、夏場には透け感のある絽や紗などの涼しげな素材が選ばれ、見た目にも着心地にも爽やかさをプラス。春や秋にはやや厚手の生地が選ばれるなど、四季折々の風情を取り入れるのも魅力のひとつです。
・帯と小物の選び方
着物を着る際は、帯と帯締め、帯揚げなどの小物選びがコーディネートの決め手になります。帯の結び方ひとつで印象が大きく変わるため、シンプルな着物に華やかな帯を合わせたり、逆に柄のある着物に無地の帯を選んだりするなど、全体のバランスを考えて組み合わせましょう。
「袴(はかま)」は、上半身に着物や着物風の羽織を合わせ、下半身に袴を着用するスタイルです。卒業式や神前式など、凛とした雰囲気を演出したいシーンでよく選ばれます。近年は女性の卒業式装いだけでなく、和装の結婚式でも新郎新婦が揃って袴姿を楽しむケースが増えています。
・男性と女性の袴の違い
男性の袴は、幅の広い「馬乗り袴」などが主流で、動きやすさを重視した作りになっています。女性はスカート状の「行灯袴(あんどんばかま)」が一般的で、帯を締める位置が高め。しっかりウエストマークされるため、スタイルアップ効果も期待できます。
・合わせる着物やブーツ
女子学生の卒業式スタイルでは、袴にブーツを合わせるのが定番になりつつあります。レトロで可愛らしい印象になり、歩きやすさもあるため人気が高いです。一方で、神前式や本格和装の場合、草履を履くことが多いので、TPOに合わせた選択が必要です。
・カラーや柄
袴選びの楽しさは、色や柄に大きなバリエーションがあること。シンプルな無地の袴に華やかな着物を合わせる、もしくは逆に、落ち着いた着物に刺繍入りの袴を合わせて個性を出すなど、多彩なコーディネートが楽しめます。
夏祭りや花火大会のイメージが強い「浴衣」は、実はカジュアルな和装として幅広いシーンで着用できます。近年では、夕方から始まる結婚式の二次会などで、涼しげな浴衣姿を披露するゲストも増えてきました。
・素材と透け感
浴衣の多くは綿素材で、汗を吸い取りやすく、肌触りが軽やかなことが特徴です。麻やレーヨンとの混紡生地もあり、より涼しい着心地を追求したものも。また、透け感を出した浴衣は、女性らしい柔らかな印象を高めてくれます。
・帯の種類
浴衣には主に「半幅帯(はんはばおび)」が使われます。結び方のバリエーションが豊富で、リボン結びのほか、貝の口、文庫結びなどを楽しめます。帯留めを加えて遊び心を出すのも◎。
・カジュアル和装としての着こなし
浴衣は着物に比べると格が低いため、式典のような正式な場には不向きですが、屋外でのパーティーや二次会など“カジュアルOK”なシーンなら、季節感のある華やかコーデとして活躍します。夏らしい涼やかさを演出しながらも、小物次第で大人の上品さを加えることも可能です。
和装を着こなすうえで大切なのが「着付け」。自分で挑戦するとなると、敷居が高く感じられるかもしれませんが、基本のポイントを押さえておくとプロの着付け師に依頼する際もスムーズです。
・衿元と背中心を正す
和装の美しさは、衿がきちんと合わさり、背筋がすっと通ったシルエットから生まれます。衿元を締めすぎると窮屈に、開きすぎると乱れた印象になってしまうため、ほどよい抜け感を意識しましょう。
・腰紐や伊達締めで固定
着物や浴衣を体にしっかり固定するために、腰紐や伊達締めといった道具が使われます。これが緩いと着崩れの原因になり、きつすぎると苦しくなるため、バランスが重要です。
和装は着物や帯だけでなく、足元や髪型、アクセサリーなど全体のトータルバランスが鍵を握ります。ちょっとした工夫で、一段とおしゃれ度がアップします。
・足元
基本的には草履や下駄を履きますが、袴スタイルや現代風アレンジでブーツを合わせる場合も。足袋(たび)を履くかどうかもTPO次第。夏の浴衣なら素足に下駄が定番ですが、フォーマルなシーンでは足袋を履くことが多いです。
・髪型
髪をまとめたアップスタイルやシニヨンが和装にマッチする定番スタイル。小花やかんざし、組みひも風のヘアアクセサリーを使うと、より華やかな印象になります。ヘアメイクは重くなりすぎず、ほどよいツヤ感を意識しましょう。
・バッグやアクセサリー
洋服と同じバッグを合わせると違和感が出ることも。和装用のクラッチや巾着型のバッグを持つと雰囲気が統一されます。アクセサリーは控えめなパールや、小ぶりなイヤリングなどが相性が良いです。
和装には明確な「格」があるため、着物・袴・浴衣のどれを着るかは、シーンや目的に応じて選ぶのが基本です。
・フォーマルな式典や結婚式
留袖や訪問着、袴など、華やかさと品格のバランスが求められます。結婚式では新婦側の衣装とも調和を図りつつ、黒留袖や色留袖、色打掛など“格”を意識したチョイスが多いです。
・パーティーや二次会
準礼装~略礼装レベルの着物や、浴衣をカジュアルにアレンジする方法も。会場や季節、ドレスコードを確認して、和装で個性を演出するチャンスです。
・プライベートや季節イベント
夏の花火大会やお祭りなら浴衣が最適。気軽に着付けを楽しみたいなら、セパレートタイプの浴衣や、簡易帯なども選択肢に入るでしょう。
着物・袴・浴衣の基礎知識を一通り押さえると、和装に対するハードルが少し下がって感じられるのではないでしょうか。きちんと着れば凛とした美しさをまとい、カジュアルなシーンでは気楽な雰囲気を味わえるなど、和装には多様な表情があります。
現代では、フォーマルな結婚式から夏祭りの浴衣デートまで、和装を取り入れる機会が広がっています。また、洋服にはない柄や織り、素材感が魅力的で、季節の移ろいを身にまとえる楽しさもひとしお。
はじめての和装ドレスアップでは、まずは自分の体型や好みに合う着物・袴・浴衣を探し、小物やヘアメイクでアクセントをつけることがポイント。どんなスタイルを選ぶにせよ、“しっかりとした着付け”と“シーンに合ったコーディネート”を意識すれば、大きな失敗はありません。
この機会に日本の伝統衣装をしっかり学び、あなただけの“和”の魅力を存分に発揮してみてください。きっと周囲からも「素敵だね」と褒められるはずです。